八風吹けども動ぜず
2025年09月20日 09:30
「八風吹けども動ぜず」という言葉をご存知でしょうか。
これは禅の教えの一つで、どんな状況にあっても心を乱されない境地を表した言葉です。
現代社会を生きる私たちにとって、この古い智慧は新鮮で実用的な人生の指針となります。
八風とは何か
八風とは、人の心を動揺させる八つの風のことです。
具体的には、利(得をする)、衰(損をする)、毀(そしられる)、誉(ほめられる)、称(評判が良い)、譏(悪口を言われる)、苦(苦しみ)、楽(楽しみ)を指します。
これらは私たちが日常的に経験する、心を揺さぶる出来事そのものです。
現代風に言い換えれば、昇進や臨時収入、SNSでの「いいね」、批判や中傷、成功体験、失敗、病気や困難、そして娯楽や快楽などがこれに当たります。
私たちは毎日、この八つの風にさらされながら生きているのです。
なぜ心が揺れるのか
私たちが八風によって心を乱されるのは、外部の状況に自分の幸福や価値を依存させているからです。
褒められると有頂天になり、批判されると落ち込む。
お金が入ると安心し、失うと不安になる。
これは、自分の心の平安を外的な要因に委ねている状態なのです。
しかし、外部の状況は常に変化します。
今日の成功が明日も続く保証はなく、今の困難がずっと続くわけでもありません。
移り変わる現象に一喜一憂していては、真の安らぎを得ることはできないのです。
動じない心の作り方
では、どうすれば八風に動じない心を育てることができるのでしょうか。
まず大切なのは、物事を客観視する習慣です。
良いことも悪いことも、それは一時的な現象に過ぎないと理解することです。
「これもまた過ぎ去る」という視点を持つことで、感情の振り幅を小さくできます。
次に、自分の価値を外部の評価ではなく、内面の充実に求めることです。
他人からの承認や物質的な豊かさではなく、自分の成長や誠実な生き方に軸足を置くのです。
そして、現在この瞬間に意識を向ける練習をすることです。
過去の失敗や未来への不安ではなく、今ここにある現実に集中することで、心の安定を保つことができます。
現代における実践
現代社会では、SNSやニュースなど、八風を強める要因が溢れています。
だからこそ、意識的に心の平静を保つ練習が必要です。
情報に振り回されすぎないよう適度な距離を保つ、瞑想や深呼吸で心を整える時間を作る、感謝の気持ちを忘れずに持つ。
これらの小さな実践が、やがて大きな心の安定をもたらします。
八風に動じない心は、一朝一夕には身につきませんが、日々の積み重ねによって必ず育てることができます。
嵐のような出来事の中でも、静寂な心の中心を保つ。それこそが真の強さなのかもしれません。