自我を見つめる
2025年12月03日 09:52
鏡に映る自分の顔を見つめるとき、私たちは本当に「自分」を見ているのだろうか。
そこに映るのは、他者から見られている外側の姿に過ぎない。
真の自我は、もっと深い場所に、静かに息づいている。
現代社会を生きる私たちは、常に何かを求め、何かになろうとしている。
より良い仕事、より高い地位、より多くの承認
——外側の世界に向けられた視線は、いつしか自分自身の内側を見失わせる。
SNSのプロフィールに並ぶ「自分らしさ」は、果たして本当の自分なのか。
それとも、他者に見せたい理想の姿なのか。
自我を見つめるとは、そうした装飾を一つずつ剥がしていく作業に似ている。
社会的な役割、他人からの期待、自分に課した理想像
——それらを静かに脇に置いたとき、残るものは何だろう。
怖れ、不安、弱さ、そして同時に、誰にも侵されない核のような強さ。
それが、ありのままの自分だ。
禅の教えに「本来の面目」という言葉がある。
生まれる前の、何の色にも染まっていない自分の本質を指す。
私たちは成長の過程で、無数の経験や記憶、価値観を積み重ねてきた。
それらは確かに自分を形作る要素だが、同時に本来の姿を覆い隠す層でもある。
自我を見つめる時間を持つことは、決して自己陶酔や内向きな作業ではない。
むしろ、自分という存在の輪郭を正確に知ることで、他者との健全な関係を築く土台となる。
自分の弱さを認められる人は、他者の弱さにも寛容になれる。
自分の限界を知る人は、無理な背伸びをせず、自然体で生きられる。
静かな朝、一人きりの時間、あるいは瞑想の中で、私たちは自我と対話する機会を得る。
そこには批判も評価もない。
ただ、「今、ここにいる自分」を感じるだけだ。
呼吸の音、心臓の鼓動、流れゆく思考
——それらを観察することで、自分がいかに変化し続ける存在であるかに気づく。
自我を見つめることは、自分を知ることであり、同時に自分を解放することでもある。
固定化された自己像から自由になったとき、私たちはより柔軟に、より豊かに生きられるようになる。
答えは外にではなく、いつも自分の内側にある。
その声に耳を傾ける勇気を持つことが、真の自己との出会いの始まりなのだ。