想いを伝える
2025年10月30日 08:40

「ありがとう」「大好きだよ」「あなたがいてくれて嬉しい」。
心の中で何度も思っていても、口に出さなければ、その想いは相手には届きません。
想いを伝えることの大切さに、多くの人が気づくのは、もう伝えられなくなった後なのです。
伝えないままの後悔
父親が亡くなった後、娘の美香さん(仮名)は深い後悔に苦しみました。
父は厳格で、二人の間には距離がありました。
しかし心の奥では、父への感謝と尊敬の気持ちがあったのです。
「お父さん、ありがとう」「あなたの娘で良かった」。
そう伝えたかった言葉は、永遠に届かなくなりました。
葬儀の時、父の友人から「娘さんを誰よりも誇りに思っていた」と聞かされ、美香さんは号泣しました。
お互いに想い合っていたのに、それを伝え合うことができなかった。
なんともったいない人生だったのでしょうか。
この経験から、美香さんは変わりました。
母親に、夫に、子どもたちに、そして友人に。素直に感謝や愛情を伝えるようになったのです。
小さな言葉の大きな力
中学生の息子が不登校になった時、母親の智子さん(仮名)は必死に理由を探しました。
いじめ?勉強?しかし息子は何も話してくれません。
ある夜、智子さんは息子の部屋のドアの前で言いました。
「お母さんね、あなたがどんな状態でも、あなたのことが大好きよ。
学校に行けても行けなくても、あなたの価値は変わらない。
それだけは忘れないでね」
翌朝、息子の目は赤く腫れていました。
そして初めて、自分の苦しみを話し始めたのです。
「僕、お母さんをがっかりさせてると思ってた」と。
想いを伝えることは、相手を救うことがあります。
「あなたは大切な存在だ」というメッセージは、苦しんでいる人にとって、生きる力となるのです。
感謝を言葉にする勇気
職場で20年間一緒に働いてきた同僚が退職することになりました。
送別会で、普段は無口な山田さん(仮名)が立ち上がり、震える声で言いました。
「あなたのおかげで、どれだけ仕事が楽しかったか。
困った時、いつも助けてくれて、本当にありがとう。
あなたと働けて、僕は幸せでした」
会場は静まり返り、多くの人が涙を流しました。
退職する本人も、こんなに感謝されているとは思っていませんでした。
「こんなに嬉しい言葉はない。
この仕事を続けてきて良かった」と、彼は言いました。
感謝の気持ちは、伝えることで初めて相手の心を温めます。
「言わなくても分かっているだろう」は、ただの言い訳なのです。
想いを伝える方法
想いを伝えることは、決して難しいことではありません。
完璧な言葉を探す必要もありません。
手紙でも、メールでも、直接の言葉でも構いません。
「いつもありがとう」
「あなたがいてくれて助かっている」
「大切に思っている」。
シンプルな言葉でいいのです。
ある夫婦は、毎朝出かける前に「行ってきます。あなたを愛しています」と伝え合います。
最初は照れくさかったそうですが、今ではこの習慣が二人の絆を強くしています。
子どもに「大好きだよ」と毎日伝える母親。
部下の良いところを見つけて言葉にする上司。
友人に「あなたがいてくれて嬉しい」とメッセージを送る。
これらの小さな行動が、人間関係を豊かにし、相手の人生に光を灯すのです。
今日、誰に伝えますか?
私たちには、明日があるという保証はありません。
今日会った人に、もう二度と会えないかもしれない。
そう思うと、伝えるべき想いを先延ばしにする理由はないはずです。
恥ずかしさや照れは、一瞬のことです。
しかし、伝えないままの後悔は、一生続きます。
あなたの心の中にある感謝、愛情、尊敬の気持ち。
それを、今日、言葉にしてみませんか?
その一言が、誰かの人生を変えるかもしれません。
そして、あなた自身の心も、軽く温かくなるはずです。